■イタリアは焦らなかった

 反撃に出たいイタリアだったが、3バック+両ウイングバック+セントラルミッドフィルダー2人でしっかり引いて守るイングランドはチーロ・インモービレやロレンツォ・インシーニェらに使えるスペースを与えず、いわゆる塩漬け状態で時間を消化していった。

 ところが、先制があまりにも早すぎたことでイタリアは慌てなかった。引いて守るイングランドに対して無理に攻めず、カウンターだけは受けないように、後方でじっくりボールを動かしながらどうにかして数的優位を作れないものかと試み続けた。右サイドのフェデリコ・キエーザが攻守でピッチのあらゆる場所に顔を出すというやり方で、半ば強引にシステムの違いを埋めようとしたイタリアがようやく左サイドで優位に立てることを見つけて前半が終わった。

 後半もそのまま同じ構図で始まると、ロベルト・マンチーニ監督が動いた。

 54分、ニコロ・バレッラとインモービレを下げてブライアン・クリスタンテとドメニコ・ベラルディを投入。この交代でキエーザを左サイドに回し、加えてインシーニェの0トップという形にしたイタリアは、ようやく中盤から前でボールを思い通りに動かすことが可能になった。

 そのまま耐えきろうとするイングランドだったが、67分にコーナーキックからついに同点ゴールが生まれた。

 するとサウスゲート監督が動いた。トリッピアーをブカヨ・サカと交代してシステムを4バックに変更。同点になったことで、そのまま時間を過ごす意味はもうないということだった。

 ただし、これはあくまでも引きすぎてしまっている状態を変えるという意図であり、勝負に出たわけではなかった。

第2回につづく
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