今回のワールドカップでは、アメリカ代表選手の出場停止処分について、ドナルド・トランプ大統領が圧力をかけたと言われている。出場停止が猶予となった本人を含めて多くの人が振り回された格好だが、現地を取材するジャーナリストもまた、かつてないトラブルに見舞われていた。今年73歳を迎え、W杯取材14回目となる蹴球放浪家・後藤健生。彼を待ち受けていたのは、度重なる飛行機の遅延や「予約したはずのホテルが消滅している」という、アメリカならではの過酷すぎる移動地獄だった――。
■過去14回で「最難関」の移動地獄
今年のワールドカップは広大な北米大陸(メキシコも地理学的には北米大陸の一部)を股にかけて開催されました。試合を見るためには飛行機に乗っての移動が必要で、また、昼の12時キックオフといった試合もあるので、飛行機で移動しても間に合わないようなスケジュールもありました。
僕にとって今年でワールドカップは14回目でしたが、これまでで最も移動が難しい大会のように思いました。
たとえば、2018年大会も広大なロシアが舞台でしたが、開幕戦や決勝戦を含めて首都のモスクワでの試合が多かったので、モスクワに宿を取っていれば多くの試合を見ることができました。他都市での試合を見るときでも、荷物はモスクワに置いたまま飛行機か無料寝台列車で往復すればよかったのです。
しかし、2026年大会にはモスクワのような「ハブ」がなく、移動を続けなければなりませんでした。
さらに観戦者を悩ませたのが飛行機のスケジュール変更が多かったことと、ホテルの予約が入っていないというトラブルが多かったことです。
チュニジア対日本の試合が行われたモンテレイでは、試合当日に到着したのにホテルの予約が入っていなくて困っていた日本人がいましたし、僕の同業者の中でも同じような目に遭った人が3人ほどいました。
ある記者は予約サイトではなく、ホテル・チェーンの公式サイトから予約したのに、行ってみたらそのホテルはなくなっていたというのです。
アメリカ合衆国はAI技術などで世界をリードするコンピュータ先進国のはずですが、一般社会ではコンピュータ・システムをうまく使いこなせていないようでした。結局、一番信頼できたのは、受付のおばちゃんがボールペンで手書きの予約リストを見ながら切り盛りしている個人(家族)経営のホテルだったのです。

























