日本国内には、さまざまなサッカーの大会が存在する。その中でも独特の地位を占めているのが、「全国社会人サッカー選手権大会」だ。通称「全社」とは、どのような大会なのか。サッカージャーナリスト人生で初めて観戦した後藤健生が、同大会の「魅力」と「危険」を指摘する。
■初めての「全社」観戦
滋賀県で開催されていた第60回全国社会人サッカー選手権大会、通称「全社」を観戦してきた。これまで数多くの試合(大会)を観戦してきた僕だが、「全社」を観戦するのは、今回が初めてだった。
今年の大会で優勝したのは、JAPANサッカーカレッジ。新潟県にある専門学校のチームだ(専門学校のチームがなぜ「社会人」なのかについては、後述)。サイズのあるDFとFWを武器に戦い、準決勝では昨年優勝のFC刈谷とスコアレスドローの末、PK戦で決勝進出を決め、決勝戦も1対0のスコアという粘り強い戦いを見せた。
準優勝のFC徳島は準決勝まで全勝(PK勝なし)で決勝進出を決め、最もバランスの取れたチームだったが、決勝ではJANPANサッカーカレッジの強力な守備を崩せなかった。
ノックアウト方式の大会らしく、1点を争う激しい戦いが続き、また、それぞれのチームには武器となるような選手がいて、それなりに楽しめる内容の試合だった。
だが、選手たちにとって気の毒なのは、この大会が1回戦から決勝まで5試合連戦で行われたことだ。Jリーグでは、ウィークデー開催があると「連戦」という言葉を使うが、ここで言う「連戦」というのは、文字通り毎日試合をすることだ。
「全社」は、32チーム参加で行われるが、今年の第60回大会は10月18日の土曜日に1回戦を戦った後、連日試合をして23日の水曜日に決勝戦が行われたのだ(試合は80分で、引き分けでも延長戦は行わず、PK戦で次戦進出チームを決める)。
世界中で、過密スケジュールの是非が取り沙汰されている昨今だが、これはとんでもないスケジュールだ。