■スタッフと選手の「ウェアの色」が重なった

 ピッチ上で走る3人のレフェリーは「対角線審判法」というポジショニングをとって、プレーを2人で挟み込むように見る。主審は両エンドの左コーナーを結ぶ線を中心に動き、副審は右コーナーからハーフラインとタッチラインとの交点までの範囲でタッチラインのすぐ外を走ってオフサイドなどを監視する。そしてメインスタンド側の副審を「第1副審」、バックスタンド側の副審を「第2副審」と呼んでいる。

 一方、チームベンチは、通常のスタジアムではピッチに向かって左側をホームチームが使い、右側をビジターチームが使う。第2副審がオフサイドラインを見ようとしたとき、ピッチ上の選手たちの向こうにホームベンチのコーチングスタッフやサブの選手たちが目に入る。ベンチにいる控え選手はピッチ上の選手と違う色のビブスを着用することになっているのだが、この日の横浜FMのようにスタッフのウェアの色がプレーヤーと重なると、非常に見にくくなる。そこで間違いを防ぐために、ベンチのスタッフにもビブスの着用が求められたのである。

 おそらくキューウェル監督は、「暑くて仕方がない」とでも言ったのだろう。あるいは、「元スーパースター」の監督として、ビブスを着てテクニカルエリアに立つ自分の姿など、容認できなかったのかもしれない。そこで別の色のシャツを持ってきてほしいと要求したと想像される。しかし、大観衆の前で上半身裸になるのはどうだろうか。一度、引っ込んで着替えるとか、ハーフタイムまで待つなどできなかったのかと、思ってしまうのである。

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