アジアカップは準々決勝敗退に終わった。2023年6月からテストマッチ9連勝を飾り、絶対的な優勝候補として開催国カタール入りしたが、FIFAランキングアジア最上位の実力を見せることなく終えた。アジアの頂点に立てなかった理由は、ひとつではない。チームの前進を阻害する要因が折り重なり、ベスト8での撤退となったのだった。
イラン戦後、森保一監督自身も認めた選手交代問題――それに関連するところでは、ディフェンスにも触れなければならない。
今大会の日本は、全試合で失点を喫した。リスタートへの対策が十分でなく、GK鈴木彩艶の個人的なミスもあった。森保監督が言う「いい守備からいい攻撃」へつなげる場面は、きわめて限られていたと言っていい。
敗戦を喫したイラクとイランには、相手のシンプルな狙いに屈した。前線へのロングボールをターゲット役のFWに収められ、守備ラインを後退させられた。競り合いの連続で心身ともにストレスをためていき、チーム全体として攻撃へ出ていくことができなくなっていった。
古い話を持ち出せば、1996年のアジアカップ準々決勝のクウェート戦でも、長身FWへのシンプルな縦パスで守備組織を崩された。グループステージを3連勝で通過しながら、クウェートに0対2で敗れたのだった。前線からのプレスを回避されてフィジカル勝負で追い詰められるのは、21世紀になっても変わらない日本の課題と言える。
ロングボールをきっかけとして押し込まれないためには、パスの出し手にプレッシャーをかけつつ、CBが競り合いで跳ね返すことが重要になる。ボランチなどによるセカンドボールの回収もポイントになってくる。
それでもやられてしまうのなら、割り切ってもいい。バーレーン戦の終盤のように、CBを増やして3バックへ変更するのは選択肢のひとつだ。
3バックといっても守備時は5バックになるので、格上を封じるための対応と考えられがちだ。4バックでの戦いに比べるとカウンター狙いの印象が強まるが、それもケース・バイ・ケースである。
今大会の日本は、190センチの町田浩樹、188センチの板倉滉、187センチの冨安健洋と、長身のCBを揃えていた。左サイドバックで起用されている伊藤洋輝も、188センチのサイズを持つ。中東勢相手でも制空権は握れるはずだ。彼らの高さを生かすのは、合理的な対応と言える。
3バックで攻撃がカウンター狙いになるとしても、浅野拓磨や前田大然のスピードを生かすことができる。相手を自陣へ引き込めば、三笘薫にスペースを与えることができる対戦相手やスコア、時間帯に応じて3バックで戦うことで、より柔軟で現実的な試合運びができると思うのだ。