後藤健生の「蹴球放浪記」第208回【サッカーと酒の切っても切れない関係】の巻(2)女子W杯開催ニュージーランドで遭遇した「フランス」と「分厚いリスト」の画像
ウェリントンで通った「ハドソン」の店内。時間が早かったので、まだ空いている。提供/後藤健生

 蹴球放浪家・後藤健生のフィールドワークは、サッカーだけにとどまらない。世界各地の食も、大事な取材の一部だ。そして、食の重要な部分を占めるのが、のどを潤す酒である。サッカーと酒の知られざる関係とは――。

■ボルドー地方の「分厚いメニュー」の大半は…

 僕たちが食事を始めてしばらくしたら、さっき見てきた試合の審判団もやって来ました。各地から集まったレフェリーたちも、やっぱり「せっかくボルドーに来たんだから、ここは絶対ワインを楽しもう」というわけなのでしょう。

 メニューを見てビックリというか、納得してしまいます。

 メニューといっても、料理の種類はたいしてありません。1ページに収まっています。分厚いメニューの大半はワインリストだったのです。

 産地別にワインが並んでいます。高級ワインになれば村別に、さらに畑別に並んでいます。産地や村名や畑の名を見れば、知識のある人なら、どんなワインか分かるというわけです。

 残念ながら、当時の僕はワインの知識がまだ足りませんでした。店の人の意見を聞いて、値段と相談して銘柄を選ぶしかありません……。

 実際、ワイン通の食事というのは、ワインが主体です。

 1回だけですが、そういうワイン通の方にお付き合いさせていただいたことがあるのですが、まず店に電話して「どんなワインを飲むか」を決めて、到着予定時間を言っておきます。すると、ソムリエがその時間に合わせてワインをデカンタージュしておくのです。「デカンタージュ」というのは、ワインをボトルからデカンタに移すこと。その作業によって、適当な時間、ワインを酸素にさらして、飲むのに適当な状態にするのです。

 そして、食事もそのワインに合ったものを、ソムリエが選んでくれるというわけです。

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