■自分なりのトライ&エラーを繰り返し

 中村俊輔と同じ時代に日の丸を背負ったSC相模原の戸田和幸監督も「選手は自分のことだけ考えていればいいけど、監督は全体を見なくちゃいけない。そこが簡単じゃない」としみじみと語っていた。それでも誰かが正解を与えてくれるわけではない。自分なりにトライ&エラーを繰り返し、瞬時にベストなシステムや選手起用、対戦相手攻略法を見出せるように経験を積み重ねていくしかないのだ。

 それがある程度、見えてきた時、中村俊輔もプロフェッショナルの舞台で指揮官として活躍できるようになるはず。今はまだまだ一歩を踏み出したばかりだが、とにかく彼は「学びたい」という強い意欲がある。サッカーへの探求心や向上心、積極性は本当に突出している。そこが最大のストロングと言えるのではないか。

 座学から指導実践までタイトなスケジュールのS級講習会・モジュール1は今週で一区切りとなるが、この1年間で中村俊輔はどのような変化を遂げていくのか。阿部勇樹、永井雄一郎ら仲間たちと前向きな意見交換を行い、切磋琢磨しながら、オリジナルの指導者像の確立を目指してほしいものである。

(取材・文/元川悦子)

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4