■ベテラン2人の気迫

 オーストラリア戦は試合前から激しい雨が降り、ピッチコンディションも最悪。勝てばW杯出場が決まる試合だったが、欠場選手や天候状況などもあり不安が立ち込めていた。

 しかし、ウォーミングアップ中、大雨で声が聞こえにくい状態であるにもかかわらず、大声を出してずっと選手たちを鼓舞していたのが吉田と長友だった。W杯出場を決める試合で経験のあるベテラン2人が大声を出し、最後まで日本を牽引し、今予選を通して、精神的支柱としての役割が目立っていた。

 吉田は主将として日本を引っ張ってきた。批判の声を選手の代表として一番前で受け、チームを信じて戦い続けた。10月のサウジ戦で負けた後、インタビューで吉田は「全部終わってから判断してほしい」とコメント。

 そして、今回掴んだW杯への切符。今回のオーストラリア代表戦後のインタビューでは目に涙を浮かべながら「ホッとしています」と一言。安堵の表情を見せた。批判を受け止め続けた吉田が見せた試合後の涙に感動した日本国民も多いはずだ。

 そして長友は今予選でのパフォーマンスの低下を指摘され、中山雄太との世代交代の声があがっていた。長友は2021年7月にフランスマルセイユを退団。なかなか新天地が決まらず、無所属で代表戦に臨んだ試合もあった。長友もオーストラリア戦のあとのインタビューで目に涙を浮かべた。

「みんな一丸となって這い上がってきた」とコメントしたが、批判や様々な意見を受け一番這い上がってきたのは長友だ。どんな状況でもめげず、挫けず、自らを信じて戦ってきた男が流した涙。批判を受けながらも、スタメン起用で戦い続け最後はW杯への出場を勝ち取った男の涙は感動を与えた。

 ここからは日本人全選手を含めたサバイバルが始まる。長友の自身4度目のW杯に向けた挑戦はすでに始まっている。

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